グリッド・パリティとは
グリッド・パリティとは、太陽光発電の発電コストが既存の家庭向け電気料金と等価になる点のことを指します。
ただし、実際の電気料金は住宅用と産業用でも異なる上、電力会社の管轄地域や時間帯によっても異なってくるため、明確な定義は定められておらず、グリッド・パリティの具体的な条件は文脈によってその都度変わります。
また、電力を消費する消費者側の目線から見た価格だけでなく、発電事業者側が利益が出る価格になる点と併せて論じられることもあります。
日本のNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、家庭用電力並み(23円/kWh)になることを第一段階グリッド・パリティ、産業用電力並み(14円/kWh)になることを第二段階グリッド・パリティ、汎用電源波(7円/kWh)になることを第三段階グリッド・パリティと定義しています。
太陽光発電が将来、一定程度の電力供給を担うようになるためには、太陽光発電システムのメーカー各社が製造コストを低減しグリッド・パリティを実現することが必要不可欠だと言われています。
例えば2012年7月から開始された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)においては、太陽光発電システムを通じて発電された電力は10年間もしくは20年間という長期に渡り、42円/kWhで電力会社が買い取ることが義務付けられていますが、このFIT制度による太陽光発電システムの普及・推進は完全なる政策主導に基づくものであり、政策に依存した形となってしまっています。
そうではなく、太陽光発電がコスト面でも他の発電方法と競争力を持つことができるようになれば、市場において自然と普及は進んでいくと考えられますので、その意味でグリッド・パリティにいつのタイミングで到達するのか、という点が注目されているのです。
現状では、業界関係者の見方としては2015年頃にはグリッド・パリティは実現するとの見通しが有力ですので、日本の太陽光発電業界は、2015年が一つの産業として自立できるか、できないかの境目となりそうです。
世界の太陽光発電市場に目を移してみれば、既に縮小傾向が顕著となっている欧州市場や、低価格需要に応える形で急激にシェアを伸ばし、欧州メーカーを撤退や倒産に追い込んだ中国勢、そして中・長期的に市場拡大が見込まれる新興国市場など、業界の今後を大きく左右する動きが数多く存在している状況です。
このような不確実な情勢の中で、日本の太陽光発電産業はどのように他国のメーカーと差別化し、活路を見出していくのか、そして産業全体を支援するために、国はどのような制度設計をしていくべきなのか、このあたりについては今後も慎重な議論と早期の意思決定、決定に基づく政策への反映という、両者の観点が求められることになりそうです。