太陽光発電システムを導入するデメリット
ここでは、太陽光発電システムを導入するデメリットについてご説明していきます。
太陽光発電システムを導入するメリットで説明したように、太陽光発電システムには様々なメリットがありますが、もちろんすべてがいいことばかりではありません。
太陽光発電システムを導入する際には、メリットとデメリットの両方をしっかりと把握し、慎重に検討した上で導入するかどうかを決めるようにしましょう。
太陽光発電システムを導入するデメリット
太陽光発電システムを導入する代表的なデメリットとしては、下記が挙げられます。
- システム設置時の導入コストが高い
- 確実に投資コストが回収できるとは限らない
- 発電量が天候などの気象条件に左右される
- 夜間は発電できない
- システムには寿命がある
- 高温時に発電効率が落ちることも?
- 影などにより発電効率が落ちることも?
- 将来的に売電できなくなることも?
- 雨漏りの原因となる?
- 住宅の耐震性が落ちる?
- 外壁に設置した接続箱が火災の原因に?
- 売電すればするほど、電気料金の値上げとなり跳ね返ってくる?
それぞれの項目について詳しく説明していきます。
システム設置時の導入コストが高い
太陽光発電システムの一番のデメリットは、やはり導入時のコストが高いという点でしょう。
価格を高いと感じるか、低いと感じるかは主観的な感覚ですし、システムの規模によっても価格は大きく異なってきますので、一概に価格をデメリットと言い切ることはできませんが、現状では太陽光発電システムの導入にあたって設置工事費用なども含めると平均しても150万~300万程度かかるため、一般的な家庭にとっては簡単に導入を決められるような価格ではありません。
太陽光発電システムを導入するためにかかる費用の中には、太陽電池モジュールの開発コストや付属製品の価格に加えて、施工費用なども含まれます。
このうち、太陽電池モジュールについては依然と比較するとかなり価格が低下してきていますが、施工費用についてはどうしても人手がかかる分、コストの低減はあまり期待できません。
加えて、仮に導入コストが安くなっていったとしても、今後、導入補助金が終了したり、固定買取制度の買取価格が安くなったり、電気料金の値上げが起こったりと、様々な要因によって結果として費用対効果はあまり変わらなかったり、場合によって今後より悪化していくということも考えられます。
太陽光発電システムを導入することによって光熱費も削減できる上、売電により収入も得られるとお考えの方は多いのですが、初期投資した費用を本当に回収できるのかについてはきちんとシミュレーションし、慎重に検討した上で判断するのがよいでしょう。
尚、太陽光発電システムの費用相場については、下記のページを参考にして下さい。
確実に投資コストが回収できるとは限らない
2012年の7月から固定価格買取制度が開始したことにより、現状は太陽光発電システムにより発電した電力は一定期間の間固定価格で電力会社が買い取ってくれることになっています。
電力の買取先も、買取価格も決まっているため、太陽光発電システムは確実に収益を見込むことができるビジネスだと考えている方も多いのですが、決まっているのはあくまで買取先と買取価格だけであって、収益を得る上でもっとも肝心な発電量に関しては何の保障もないというのが、太陽光発電システムのもっとも難しい部分です。
メーカー各社や太陽光発電の施工業者などは、発電量のシミュレーションサービスなどを提供していますので、導入前からどの程度の発電量を見込むことができ、初期費用は何年で回収できるのかなど、理論上の予測をすることは可能となっています。
しかしながら、当然すべてのケースにおいて実際の発電量がシミュレーション通りとなるとは限りませんし、太陽光発電システムは10年~20年といった長期のスパンで収益化を目指していくモデルですので、回収期間が長い分、多くの不確実性を孕むことになります。
ただでさえ10年後の世界など誰も予測できないほど世の中全体がものすごい早さで変化しているわけですから、10年、20年といったスパンにおいて確実に収益が見込めるなど、誰も保証することはできないということを頭に入れておいたほうが良いでしょう。
具体的にどのような不確実性があるかについては、下記で詳しく説明していきます。
発電量が天候などの気象条件に左右される
太陽光発電システムのもっとも大きな弱点は、発電量が天候などの気象条件に左右されてしまい、とても不安定だということです。
日照量が少なければ少ないほど発電量は減ってしまいますので、季節や時間帯はもちろんのこと、地域や住宅の立地環境、隣接する施設の状況などによっても、発電量は変わってきます。
そのため、実際に発電できる発電量については各住宅の個別の状況を加味して考えていかなければいけません。実際の自宅の屋根の条件をできる限り精緻に考慮した発電量シミュレーションを作成しないと、いざシステムを設置してみたら想定よりも全然発電ができなかったという事態に陥ってしまう可能性もあります。
夜間は発電できない
太陽光発電は太陽光を利用した発電システムですので、当たり前ながら夜間は発電することができません。発電システムを活用できるのは日中だけとなります。
また、日中に発電した電力は発電システムが稼働できない夜間に活用できるので、1日中太陽光発電システムの電力で過ごすことができると勘違いされている方も多いのですが、実際には日中に発電した電力を夜間時に活用することはできません。
そのため、いくら発電効率が良い太陽光発電システムを導入したとしても、夜間の時間帯については通常通りに電力会社から電気を買わなければならないのです。
システムには寿命がある
太陽光発電システムには寿命が存在しています。実際の寿命については製品や利用条件によっても異なってくるため一概に言うことはできませんが、太陽光発電システムの肝となる太陽電池モジュールの場合、一般的には寿命が20年~30年程度だと言われています。
その他のパワーコンディショナなどについてはより寿命が短く、10年程度などと言われています。
太陽光発電システムの場合は、急にシステムが故障して動かなくなる、発電ができなくなるというよりは、経年とともにシステムの機能が徐々に低下していき、発電効率が悪くなっていくという変化を辿ることが多いため、設置時の発電効率から何%発電効率が悪化したら寿命が終わったと考えるのかなど、寿命の定義についても明確に定めることは難しいでしょう。
太陽電池モジュールは他の発電方法と比較してシステムの可動部分がないため、故障リスクなどが低く、寿命が長いと言われてはいるものの、設置から20年ほど経過した際には、再度設置したシステムを入れ替える必要性に迫られる可能性も十分にあります。
もし仮に20年後にシステムの入れ替え作業が発生するとなると、その際はまた新たなシステムの設置費用がかかることになるため、せっかく初期の投資費用を回収してこれからは売電収入が全て利益になると思った矢先、再び多額の投資をしなければいけなくなる、という可能性もあるのです。
また、太陽電池モジュールの寿命がいくら長かったとしても、そもそも住宅自体の寿命は一般的に30年~40年、屋根や外壁の寿命は20年などと言われていますので、住宅自体の改築や補修可能性なども考えていけば、太陽光発電システムの寿命だけを気にしていてもあまり意味がないことが分かります。
長期の投資をするということは、長期に渡り計画を練るということですから、太陽光発電システムを導入することで得られる収入シミュレーションの計算をするだけではなく、20年後、30年後はどのように暮らしているか、という自分や家族の未来を総合的に考えていくことがとても重要となります。
尚、太陽光発電システムの寿命については、下記ページに詳しくまとめていますので、参考にしてください。
高温時に発電効率が落ちることも?
これもあまり知られていないことですが、太陽光発電システムは、太陽電池モジュールが高温になると発電効率が落ちてしまう、という課題を抱えています。
このあたりも発電量のシミュレーション時には考慮をしておかなければいけない、不確定要素の一つです。
イメージとしては、日照量が多ければ多いほど発電量は増すわけですから、高温になればなるほど発電効率が上がりそうな気もしますが、実際にはその逆なのです。
しかし、全ての太陽電池モジュールが高温時に出力低下するわけではありません。
現在発売されている太陽電池モジュールの多くは単結晶シリコン型、多結晶シリコン型など、シリコンを使用した太陽電池モジュールとなっており、これらの結晶シリコン型の太陽電池モジュールは残念ながら高温時に出力が低下してしまうという弱点を持っています。
しかし、最近では結晶シリコンではない非結晶シリコン型(アモルファスシリコン型)と結晶シリコン型を組み合わせたハイブリッド型太陽電池モジュールや、化合物で作られたCIS(CIGS)型の太陽電池モジュールなど、高温時でも出力の低下が少ないという特性を持った太陽電池モジュールも徐々に普及してきています。
高温時の出力低下という課題については、今後の技術革新により更なる改良が期待されています。
太陽電池モジュールのタイプや、各タイプの特性については、下記を参考にしてください。
影などにより発電効率が落ちることも?
太陽光発電システムの発電効率を大きく低下させる要因となるのが、影や積雪、ゴミ、汚れなどにより、太陽電池モジュールの一部が太陽光から隠れてしまうことです。
太陽電池モジュールの構造上、太陽電池モジュールの一部が発電できなくなると、モジュール全体の発電効率が落ちてしまい、影や積雪などで隠れてしまった面積以上に発電量が低下してしまうのです。
現在では、CIS(CIGS)型太陽電池モジュールなどのように、仮に影などで太陽電池モジュールが隠れてしまったとしても、隠れてしまった面積分以上の発電ロスは起こらないようなモジュールも販売されています。
ただ、CIS(CIGS)型の場合には単結晶シリコン型などと比較するとそもそもの発電効率自体が低いといった課題があるため、実際の発電量で行けば、どちらのほうが発電効率が高いかどうかは環境によって大きく左右されてしまいます。
この影の存在なども、太陽光発電の発電量を大きく左右する、隠れた不確実要因と言えるでしょう。
将来的に売電できなくなることも?
太陽光発電システムの収支シミュレーションをする際には、基本的に余剰電力は全て売電に回されるということが前提になっていることがほとんどです。
しかし実際には、余剰電力は確実に売電されるとは限らないのです。これも意外と知られていない事実の1つなのですが、売電ができないケースについては、電気が流れる仕組みを知ることで理解することができます。
詳しくは、下記のページを参考にしてください。
雨漏りの原因となる?
太陽光発電システムを屋根に設置する際、新築時に導入する場合は最初から屋根と太陽電池モジュールが一体になっているタイプが最近では増えてきているのでそこまで問題はないのですが、既存の屋根にシステムを設置する際には、太陽電池モジュールを固定するための架台を屋根に設置するために、屋根に穴を空けて架台を固定することになります。
そして、この屋根に穴を空けるという作業が、後になって雨漏りの原因となったという事例が多発しています。
もちろん、既存の屋根に設置する場合、必ずしも雨漏りになってしまうわけではありません。施工技術が低い一部の業者による工事がこうした被害を生んでしまっているというのが現状であり、しっかりとした施工業者であれば問題ないと考えて大丈夫ですが、既存の屋根に架台を設置する場合、念のためそうしたリスクがあるということも理解しておきましょう。
また、最近ではこうしたトラブルを防止するために、穴を開けずに固定するタイプの架台や、出来る限り施工箇所と屋根への負担を少なくする架台など、太陽電池モジュールの架台についても技術革新が進んでいます。
法人・産業用の太陽電池モジュールに限っては、架台を必要としないシート型の製品なども開発されてきています。
施工に伴う雨漏りのリスクなどは今後減っていくと思われますが、くれぐれも施工業者の技術力だけには注意するようにしましょう。
住宅の耐震性が落ちる?
これもあまり語られることがありませんが、太陽光電池アレイを屋根の上に設置することで、住宅全体の耐震性が低下するという問題が発生することがあります。
太陽電池モジュールは、サイズにもよりますが平均的に1枚につき10kg~15kgほどの重さとなっています。一般的には一つの屋根の上にこのモジュールを20枚前後は設置するのが通常ですから、仮に一つ15kgの太陽電池モジュールを20枚設置したとすると、太陽電池モジュールの重量だけで300kgほどの負担が屋根にかかることになります。
また、太陽電池モジュールに加えて架台の重さも考えれば、屋根への負担はそれ以上になります。
屋根の重さが増すことでどのようなことが起きるかというと、家の重心が、必然的に下から上へと上がっていくのです。
重心が上がれば上がるほど、地震が起きると建物は揺れやすくなります。揺れが大きければ大きいほど住宅の骨子部分にかかる負担は増えてしまいますので、耐震性は低下すると考えられるのです。
最近では、太陽電池モジュール自体をコンパクトに軽量化する取り組みや、モジュール1枚あたりの発電効率を上げることで設置枚数を減らし、太陽電池アレイ全体の重量を軽くすると言った取り組みも進んでいますし、架台についても軽量化、コンパクト化が進んでいます。
そのため、耐震性についてはそこまで心配する必要はありませんが、万が一のことも考えて理解だけはしておくとよいでしょう。
外壁に設置した接続箱が火災の原因に?
最近では少なくなってきていますが、太陽光発電システムが普及し始めた当時は、導入時に住宅の外壁などに設置する接続箱が原因で火災が起きるという事故が発生し、メーカーが該当製品のリコール(製品回収)を実施するということもありました。
接続箱は住宅の外壁部に設置することが多いのですが、風雨により中に水が入ってしまい、接続端子がショートして火災につながったという事例となります。
通常、接続箱は外箱部分もしっかり作られていますし、そもそも設置は雨や風が当たらない場所を推奨されていますので、専門業者と相談の上、規定通りに設置をすれば問題は起こらないのですが、実際に接続箱を原因とした火災が発生したことは事実なので、設置する場所や接続箱が置かれた環境によってはそうしたリスクが出てくるということも覚えておきましょう。
売電すればするほど、電気料金の値上げとなり跳ね返ってくる?
この問題は、太陽光発電システムそのものの問題というよりは、太陽光発電システムを普及させるための国家的な政策がもたらしている問題ということができます。
その問題をもたらすことが懸念されている制度が、太陽光発電システムが確実に収益を得られるビジネスだと言われる一番の要因となっている「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」というシステムです。
厳密に言えば、固定価格買取制度自体に問題があるわけではなく、問題なのは、買取価格の設定です。
例えば、2012年10月現在の制度であれば、2013年3月31日までに太陽光発電システムを導入した場合、発電した電力は下記の価格で売電できることになっています。
太陽光 |
10kW以上 |
10kW未満 |
10kW未満 (ダブル発電) |
調達価格 |
42円 |
42円 |
34円 |
調達期間 |
20年間 |
10年間 |
10年間 |
一方、2012年10月現在の通常の電気料金はいくらかというと、電力会社や申し込んでいるプランにもよりますが、料金単価は大体20円~30円程度ですので、その価格と比較すると、電力会社が買い取る価格はかなり高いことが分かります。
そして、電力会社の電力調達コストが高くなれば高くなるほど、最終的な皺寄せは誰に行くかというと、それは当然ながら電力を利用している消費者なのです。
つまり、太陽光発電の普及により電力会社が高い価格で買い取る電力量が増えれば増えるほど、その分の負担は最終的に電気料金の値上げとして自分たちに跳ね返ってくる仕組みとなっている、ということです。
この仕組みは、経済産業省の資源エネルギー庁ホームページや、首相官邸のホームページにもしっかりと明記してあります。
- 経済産業省:資源エネルギー庁「再エネ賦課金とは」
- 首相官邸ホームページ:「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」
そのため、買取価格の設定を誤ってしまうと、太陽光発電システム事業に取り組んだ一部の企業や、システムを導入した一部の住宅には売電によって本来あるべき以上の利益が流れ込んでしまい、その帳尻合わせは消費者がするという構図になってしまうわけです。
実際に、日本に先立って2000年から再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度を開始したドイツは、この制度のおかげで当初の目論見通りに太陽光発電システムの導入が進み、2005年以降が太陽光発電システムの発電量で世界1位の座を保っています。
しかしながら、ドイツはこの政策に取り組んだ結果として、2000年以降の電気料金が上昇し続け、2012年には家庭用の電気料金が2000年時点と比較して1.8倍以上にまで上昇してしまい、消費者からの不満が噴出している他、特に電力消費量が多く、そのぶん電力費用負担も多くなる繊維業界からはこの制度が違憲であるとして訴訟が起こるなど、国家的な問題へと発展しています。
ドイツの場合は更に、こうした制度と手厚い補助金政策により保護され、一時は太陽光発電メーカーとして世界No,1に上り詰めたQセルズですら中国を中心とした激しい価格競争と急速な需要鈍化の影響で倒産に追い込まれ、大手のシーメンスも業界から撤退するなど、燦燦たる状況に陥っており、太陽光発電に対する国家的な普及推進政策は単なる補助金のばら撒きに終わったという厳しい批判が相次いでいます。
当然、日本の固定価格買取制度もドイツをお手本としていますので、同じ過ちを犯さないようにしなければいけません。
太陽光発電市場の変化に合わせて柔軟に固定価格を調整できるような制度設計なども求められています。
ただし、太陽光発電システムを導入する側からしてみれば、買取価格が高ければ高いほど最終的には消費者負担として跳ね返ってくるとは言っても、導入をする側からしてみれば買取価格が下がれば下がるほど初期投資が回収できるまでの期間は長くなってしまうわけですので、とても難しいところです。
今後の買取価格の変更状況と電気料金の変化、補助金制度の状況によっては、太陽光発電システムの導入により確実に収益が得られるとは限らなくなる可能性もありますので、導入を検討している方は早めに決断をするのがおすすめだと言えそうです。