売電ができない?電圧上昇抑制とは?
太陽光発電システムを導入することで得られる大きなメリットの一つが、余剰電力を電力会社に売ることができる「売電」です。
売電の仕組みでご説明した通り、売電は、発電した電力を電力会社へと送るわけではありません。
電流は電圧の高いほうから低いほうへと流れるという電流の仕組みを利用して、パワーコンディショナを通じて発電した電力の電圧を送電線の電圧よりも高めることにより、送電線へと電力を逆流させ、その電力量を売電メーターで計測しているのです。
しかし、実はこの「売電」、どんなときでも確実にできるわけではないのです。これはあまり知られていないことなのですが、実は太陽光発電システムにより電力を発電しても、電力を売れないときがあるのです。
これは、「電圧上昇抑制」という仕組みにより起こります。
「電圧上昇抑制」とは?
発電状況や売電状況をチェックすることができる電力モニタを見ていると、まれに「電圧上昇抑制機能が働きました」という表示が出ることがあります。
この電圧上昇抑制が起こっていると、いくら発電をしても電力を売ることができなくなってしまいます。
それでは、原理について説明していきましょう。
パワーコンディショナの電圧は107V以上にはならない
日本の電気に関わる法律としては「電気事業法」という法律があるのですが、この電気事業法の中で「電圧については100V供給の場合は101V±6Vを超えない範囲内とする」と定められています。
そのため、電力会社は95V~107Vまでの範囲内で電圧を調整しながら各家庭への電力供給を行っています。(実際には電力会社は負荷のピーク時に対応するために、電圧降下を考慮して高い電圧で供給を行っているのが現状なので、電力負荷が少ない時期や深夜になると、この上限を超えることもあります。)
そして、当然ながらこの規制があるために、パワーコンディショナが太陽光発電システムで発電した電力を売電に回すために電圧を上げるときも、107V以上になることはありません。
通常であればそれでも問題はないのですが、まれに、自宅につながれている送電線の系統の電圧も107Vになってしまっていることがあります。
こうなると、先ほど電力は電圧が高いほうから低いほうへと流れると説明しましたが、系統の電圧も107Vと高い状態になっているので、自宅から送電線へと電力が遅れなくなってしまうのです。
しかし、パワーコンディショナも電圧を107V以上に上げることはできませんので、ここで電圧上昇抑制機能が働くということになります。
それでは、自宅の送電線がつながれている系統の電圧が高くなってしまう状況とは、具体的にどのような状況なのでしょうか。
一言で言えば、「電気の供給量に対して消費量が少ない状況」を指します。
つまり、電力会社や太陽光発電システムによりその系統に送電されている電力量に対して、その系統内での消費量が少ないと、系統の電圧はどんどんと上がってしまうのです。
そのため、現状この電圧上昇抑制がもっとも危惧されているのは、自宅の系統内において太陽光発電システムの設置件数が増えた場合です。
自宅周辺の家庭でも次々と太陽光発電システムの導入により自家発電を始めると、日中に電力会社から購入する電力量が減るどころか、各家庭が発電した余剰電力を送電線へと送り込む形になります。
すると、電力の消費量は減っているのに供給量は増えるという状況が発生するので、電圧が高くなりやすくなるのです。
分かりやすく言えば、系統内における電力の生産量が消費量よりも多すぎて、電力の買い手がつかない状態、つまり売れ残り状態になってしまっているということですね。
「電圧上昇抑制」は誰のせい?
電圧上昇抑制により売電ができなくなってしまうと、太陽光発電システム時にシミュレーションしていた売電収入を得ることができず、初期投資費用の回収期間が伸びてしまいかねません。
そのため、できるかぎりこの電圧上昇抑制は防ぎたいところです。現状、電圧上昇抑制が起こることはとても稀であり、もし起こってしまったとしても瞬間的、一時的であることも多いので、大きな売電ロスにつながることはありません。
しかし、もし系統内における太陽光発電システムの普及などにより、電圧上昇抑制が頻繁に起こるようになってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
現状難しいところは、この問題は誰のせいでもないと言うところです。
当然ながら、電圧上昇抑制はパワーコンディショナや売電メーターの故障等ではありませんので、施工業者やメーカーなどに話をしても、どうすることもできませんし、107Vまでという電圧の制限も法律により決まっているわけですので、電力会社が悪いわけでもないのです。
そのため、今後の太陽光発電システム普及によりこうした問題がより顕在化してくる場合には、蓄電池の導入・普及により売電量を抑制するなどが一つの方法として考えられますが、それでは売電収入も減ってしまいますし、何より現状の蓄電池の価格ではとても一般に普及するとは思えません。
売電という仕組み自体もいつまで続くかは分かりませんが、かりに売電の制度が継続され、太陽光発電システムの普及が進んだとしても、いずれはこうした壁に直面する可能性があるということは理解しておきましょう。