太陽光発電システムの寿命・耐用年数
太陽光発電システムの寿命・耐用年数はどの程度なのでしょうか。太陽光発電システムは高い初期費用を払い、10年~20年という長いスパンで初期投資費用を回収していく仕組みですので、寿命や耐用年数が気になる方も多いのではないかと思います。
ここでは、気になる太陽光発電システムの寿命や耐用年数について、詳しく御説明していきます。
部品により異なる寿命・耐用年数
一口に太陽光発電システムと言っても、実際には太陽電池モジュールやパワーコンディショナなど、様々な装置があり、当然それぞれの装置によって寿命や太陽年数は異なってきます。
太陽光発電システムの寿命、耐用年数については、一般的にはそれぞれ下記のように語られることが多くなっています。
- 太陽電池モジュール(ソーラーパネル):15年~20年
- パワーコンディショナ:10年
太陽光発電システムは他の発電システムとは異なり可動部分がなく装置が故障しにくいと言われており、一般的に耐用年数は15年~20年程度と言われています。
また、パワーコンディショナについては、使用されている部品の寿命が10年程度なので、どのメーカーの製品でも10年程度だと言われています。
また、太陽電池モジュールの保証期間は10年~25年が通常であり、パワーコンディショナをはじめとするその他の付属製品の保証期間は10年程度が通常となっていますので、上記の耐用年数・寿命の目安は、各メーカーの保証期間も参考に語られているのかもしれません。
しかし、上記はあくまで目安であり、実際の耐用年数は20年以上のこともあれば、15年すら持たないケースもあるというのが現状です。
経年劣化と故障は区別して考える必要がある
太陽電池モジュールの耐用年数・寿命を考える際には、経年劣化と故障を区別して考える必要があります。ここでは、それぞれを下記のように定義します。
経年劣化
経年劣化とは、太陽電池モジュールの老朽化により、徐々に発電効率が落ちていく現象のことを指します。
経年劣化の場合は、例えば20年後の発電効率は導入時の90%、30年後の発電効率は導入時の80%、といったように、システムが完全に故障状態に陥るまでは徐々に性能が悪化していくことが通常です。
そのため、実際には発電効率がどこまで低下した段階で寿命とみなすのかについて明確な定義がない以上、厳密に寿命や耐用年数を示すことは難しいと言えます。
発電システムとして問題なく稼働しているかどうかという観点で寿命を考えるならば、設置から30年近く経過しても問題なく稼働しているシステムは多くありますし、太陽電池モジュールのリユース・レンタル業者によれば、20年~30年経過した太陽電池モジュールでも当初の80~90%程度の発電効率は維持できている、という話もあります。
経年劣化によるこのような出力低下を寿命とみなすのであれば、15年~20年という寿命・耐用年数の考え方は妥当だと言えますし、実際にシステムが稼働しているかどうかという観点で判断するのであれば、高品質な太陽電池モジュールの本当の寿命は30年などよりももっと長いということもできるのです。
故障
故障とは、経年劣化ではなく何らかの不具合を理由として導入当初から想定される変換効率を大きく下回っているケースや、急激に変換効率が低下してしまい、発電システムとしては機能しなくなってしまっているケースだと考えてください。
故障の場合は、寿命や耐用年数というよりは発生率で考えるほうが分かりやすくなります。
もちろん、使用年数が長くなればなるほど故障する確率は高くなるわけですので、厳密には経年劣化と故障を区別することはできないのですが、ここでは分かりやすく考えるためにあえて区別して整理します。
太陽電池モジュールの故障や不具合の事例、発生率については、下記のページに大変詳しくまとまっています。
- 太陽生活.com「ソーラー・パネルだって故障や不具合が起こります!(1/2)」
上記ページによれば、産総研の調査によると、調査対象となる住宅用の太陽光発電システム210台のうち、設置から5年目までの間に太陽電池モジュールの場合は3割を超える67台の交換が発生しているという驚きの事実が掲載されています。
つまり、設置から5年以内に、3台に1台は不具合や故障が発生しているということです。
可動部分が少なく、故障の可能性が低いと言われる太陽電池モジュールも実際にはかなりの高い確率でトラブルが発生していることが分かります。
こうした事実を考えると、太陽電池モジュールの寿命・耐用年数は一般的に長いと言われているものの、やはりメーカーの保証期間についてはしっかりと確認しておいたほうが良いと言えますね。
法定耐用年数
太陽光発電システムの耐用年数は、法的にはどのように定められているのでしょうか。
国税庁のホームページによると、下記の記述があります。
風力発電システム及び太陽光発電システムに係る耐用年数は、いずれも減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」といいます。)別表第2「23 輸送用機械器具製造業用設備」の9年が適用されます。
- 国税庁ホームページ「風力・太陽光発電システムの耐用年数について」より引用
産業用の太陽光発電システムを減価償却資産として計上する際の法定耐用年数は、9年間とされているようです。
しかし、住宅用の太陽光発電システムについては、また異なる記述があります。
なお、減価償却費の計算上、太陽光発電設備は、太陽電池モジュール、パワーコンディショナーなどが一体となって発電・送電等を行う自家発電設備であることから、一般に「機械装置」に分類されると考えられますので、その耐用年数は、耐用年数省令別表第二の「55 前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」の「その他の設備」の「主として金属製のもの」に該当し、17年となります。
- 国税庁ホームページ「自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」より引用
法定耐用年数は、売電により得られた所得(「雑所得」に分類されます)を計算する際の、減価償却費用の算出に必要となります。
寿命・耐用年数を伸ばすためには定期メンテナンスが重要
太陽光発電システムを販売する際の営業トークとして「太陽光発電システムは面倒なメンテナンスも不要です!」という話を聞くこともありますが、いくら太陽電池モジュールは可動部分がなく故障しづらいとはいえ、実際には経年による出力低下もあれば、高い割合で不具合や故障も発生しています。
保証期間中であれば新たな太陽電池モジュールに交換してもらうことも可能ですが、劣化による出力低下などは保証対象とならないケースもあります。
こうした事態を防ぎ、出来る限り高い発電効率を維持したまま長年使用し続けるために重要なのは、定期的な点検・メンテナンスです。
定期点検・メンテナンスについては、そうしたサービスを提供していないメーカーもありますし、あるとしても有償サービスとなっているケースがほとんどです。
しかし、自分自身の点検だけでシステムの異常や状況を正確に把握することはとても難しいので、有償でも良いので定期的な点検・メンテナンスを実施することを強くおすすめします。
また、太陽光発電システムの点検については、一般財団法人太陽光発電システム鑑定協会が、専門の検査装置による点検サービスも提供しているので、そちらを利用するのもよいでしょう。