太陽光発電システムと発電効率
せっかく高い費用を払って太陽光発電システムを導入するのであれば、出来る限り発電効率が高い形でシステムを導入・運用し、より早く初期投資コストを回収し、利益につなげていきたいところです。
しかし、太陽光発電システムの発電効率は、様々な条件により変化しますので、それらの条件を考慮しておかないと、シミュレーション時の発電量と実際の発電量が大きく異なり、導入費用を回収するまでの期間が大幅に伸びてしまうということも起こりかねません。
そうした事態を防ぐためには、自宅を取り巻く様々な条件を考慮した上で、自宅の環境下であれば、どのタイプの太陽電池モジュールをどのような形で設置するともっとも高いパフォーマンスを得ることができるのか、専門家にしっかり相談しながら設置を進めることです。
しかし、その前提として、発電効率に関わる最低限の知識は持っておく必要がありますので、ここでは発電効率を特に左右する重要なポイントだけを絞ってご説明していきます。
太陽光発電システム全体としての発電効率を左右する代表的なポイントとしては、下記を上げることができます。
- 太陽電池モジュールの変換効率
- 設置する方角・傾斜角
- 日照時間
- 温度
- 障害物
- パワーコンディショナの変換効率
それぞれのポイントについて、詳しく説明していきます。
太陽電池モジュールの変換効率
太陽光発電システムの発電効率を左右する大きなポイントの一つが、太陽電池モジュール自体の変換効率です。太陽電池モジュールには、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、ハイブリッド型(結晶シリコン+アモルファスシリコン)、CIS(CIGS)型、など様々なタイプの太陽電池モジュールがありますが、これらのタイプによって、発電効率は異なってきます。
発電効率の高さだけで考えると、単結晶→多結晶→薄膜型→CIS(CIGS)型のように大体の傾向はありますが、例えば同じ単結晶シリコン型の太陽電池モジュールでも、メーカーや製品によって発電効率は異なってきますし、各タイプのモジュールにはそれぞれ特徴があるので、どのような条件下でも結晶型のほうがCIS(CIGS)型よりも変換効率が高いとは限りません。
また、費用対効果の観点で考えれば、変換効率が高ければ高いほど価格も高くなりますので、価格あたりの発電量ということも考慮すると、そもそも「変換効率が高い=収益性が高い」とは一概に言えないのも難しいところです。
太陽電池モジュールを選ぶ際に重要なのは、製品としての性能を比較するのではなく、自宅の条件下で実際にもっとも高いパフォーマンスを発揮するのはどの製品か、という視点で選んでいくことです。
太陽電池モジュールや変換効率の詳細については、下記のページを参考にしてください。
設置する方角・傾斜角
太陽電池モジュールの変換効率は、設置する方角や、設置する際の傾斜角によっても変わってきます。
一般的には、年間の発電量が最も多くなる設置方法は真南の方角に対して傾斜角30°で設置することなのですが、当然ながら、全ての家庭がこのような条件を満たせるわけではありませんし、屋根のタイプによって傾斜角なども変わってきてしまいます。
太陽電池モジュールを設置する方角・傾斜角によって、具体的にどの程度発電効率が変化するのかについては、下記を参考にして下さい。
日照時間
太陽電池モジュールは、太陽光を受けているときにしか発電はできませんので、当たり前ですが1日を通じて得られる発電量はその日の日照量に強く左右されます。
日照時間は、その日の天気(晴れ・曇り・雨・雪)によっても変わりますし、季節(夏は長く、冬は短い)によっても変わります。
そして、こうした気候条件は当然ながら住んでいる地域によっても大きく変わってきます。
日照時間に関する話は下記のページでも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
温度
現在の太陽電池モジュールの主流となっている結晶シリコン型の太陽電池モジュールは、高温になると出力が低下してしまうという欠点があります。
そのため、一般的には太陽光発電システムは日照時間が長い夏の時期が一番発電量が多くなると考えられがちなのですが、実際にはそうならないことも多いのです。
夏場は気温が高くなるため、太陽電池モジュールの変換効率が低下してしまい、日照時間の長さが変換効率の悪さに打ち消されてしまうのです。
温度の変化によって具体的にどの程度変換効率が変わるのかについては、下記のページを参考にしてください。
障害物
ここで言う障害物とは、太陽電池モジュールに照射される太陽光を遮る可能性がある全てのものを指します。
当然ながら、太陽光を遮る障害物があると、発電効率は低下してしまいます。よくある具体的な障害物としては、下記が考えられます。
- 隣接する住宅・マンションなど
- 周辺の樹木・森林など
- 落ち葉
- 積雪
- モジュール表面の汚れ・付着したごみ
- 鳥の糞
また、太陽電池モジュールの欠点は、モジュールの一部でもこうした障害物により影が作られ、太陽光が当たらなくなると、構造上モジュール全体の出力が低下してしまうということです。
部分的に発電ができないだけで、全体の発電量が落ちてしまうのです。最近では影に強いCIS(CIGS)型の太陽電池モジュールなども登場していますが、CIS(CIGS)型の場合はそもそものモジュールとしての変換効率が低いなどの課題もあるため、万能ではありません。
パワーコンディショナの変換効率
パワーコンディショナとは、太陽電池モジュールで発電した直流電力を、家庭で利用できる交流電力へと変換する装置のことを指します。
太陽光発電システムを導入する際には太陽電池モジュールと併せて必ず導入する装置のひとつですが、実は太陽電池モジュールだけではなく、このパワーコンディショナにも変換効率という性能上の指標が存在しています。
パワーコンディショナが直流電力を交流電力に変換する際には、電気抵抗などでどうしても一定の電力をロスしてしまうのです。
そのため、せっかく太陽電池モジュールの変換効率が高かったとしても、パワーコンディショナの変換効率が低ければ、結果として得られる発電量は少なくなってしまいます。
太陽光発電システムの導入を検討する際には、太陽電池モジュールの変換効率だけで比較するのではなく、システム全体としての効率を比較するべきだとよく言われる所以はここにあります。
パワーコンディショナの詳細については、下記のページを参考にしてください。
まとめ
以上のように、太陽光発電システム全体としての発電効率は、とても様々な条件によって左右されてしまいます。そのため、どのメーカーの太陽光発電システムが良いのか、どの太陽電池モジュールが良いのか、などは住宅が置かれている様々な条件により大きく異なってくるため、専門家に相談するのがベストです。
また、発電量については自分自身でもシミュレーションをすることができますので、下記のページを参考にして下さい。